「花氷」(060927)

悲しんだまま
手を伸ばし
帰らない君

静かな水辺にひとり
佇む姿は儚くて
今にも消えてしまいそうに思えた

安らぎ求めてひとり
彷徨う君は寂しげで
今すぐ包んであげたかった

さよならさえ言えない
臆病な僕が
行かないでなんて
今更言えるはずもなく

記憶の水面に
ひとつ
優しい面影が
揺れた

遠くから
呼ぶ声に
君の姿はなく

凍える夜に怯え
涙して眠る君の
小さな夢が切なくて

まだ戻れない
片道の旅路に
音無く散った君と僕

言えば良かった
君を求める言葉
そんな資格
ないとわかっていても

それでも感情は
変わらない
あの日のまま
揺れる

悲しんだまま
手を伸ばし
帰れない君

遠くから
呼ぶ声に
君の姿はない

記憶の水面に
またひとつ
優しい面影が
揺れた

音無く
散った
君と僕